近年、労働市場の変化と企業の柔軟な人事戦略が求められています。
この記事では、新たな人事戦略として「正社員に有期契約を持ち込む考え方
(仮称:有期契約正社員制度)」について解説します。従来の無期雇用に対する見方を変え、有期契約正社員(仮称)のメリットや注意点も含めて分かりやすく説明します。
ぜひ、企業における新たなアプローチとして検討してみて下さい。
有期契約正社員とは
有期契約正社員とは、正社員でありながら雇用期間に制限が設けられた雇用形態です。例えば、1年単位で契約を結び、その都度更新を行います。
従来、正社員は無期契約が一般的ですが、有期契約正社員は一定期間ごとに契約が更新される点がポイントです。
有期契約正社員のメリット
有期契約正社員にはどのようなメリットがあるのでしょうか。2つのメリットを紹介します。
メリット1|社員に求める成長などを期間とともに明確にできる。
期間を設けることにより、「この契約の期間、あなたはこんなことを習得して成長ください、あんなことを完遂できるようにしてください」と契約期間の定めとともにつけることが可能になります。
たとえば、1年契約の場合
「直近の1年でこういう成長をすることができた、こんな課題ができた。それならば次の1年でこういうことに取り組み、今のプロジェクトも完遂し、次のプロジェクトにも動けるように努力してください」
といったように、その1年の間にその社員がすべきミッションを具体的な期間とともに伝えることが可能になります
メリット2|会社としてのリスク管理
もう一つは、契約期間を定めることによって社員が退職する時期をある程度コントロールすることができるようになる点です。
たとえば、1年と期間を定めて契約を結んだ場合、まず会社側からはその1年間は、基本的に従業員を途中で解雇することができませんが、これに加え、あまり知られていませんが、従業員の側も基本的にやむを得ない理由がない限りは途中で退職することはできないのです。
つまり、従業員の側にも、その期間に辞めることなく働ききることをコミットしてもらうということを契約の形でとることが可能になるのです。
なお、労働基準法137条により、1年を超える契約を結ぶ場合は、1年経過後に従業員がいつでも退職できる事となっているため、1年単位の契約がこの制度においては効果的と考えております。
有期契約正社員の注意点
これまで、有期契約正社員のメリットを紹介しました。しかし、突然今まで無期であった正社員というものを「有期」という形に変更しようとすると、一部の従業員に「キャリアダウン」と捉えられる可能性があります。従業員から見ると「会社は私たちをクビにしようとしているのか」と見る方もいるでしょう。
リーマンショックでの雇止めにもあったように、有期契約は、世間的に評判が良くありません。
そのため、有期契約正社員制度を導入するときは、行う趣旨を明確にし、あくまで人材の成長と定着を目的としていると丁寧に説明する必要があります。「前向きな戦略を持ってこの制度を導入しているんだ」とのメッセージをきちんと伝えましょう。
有期契約正社員に適した職種
有期契約正社員は、プロジェクト単位で働く職種や、IT系、コンサルティング系の仕事に向いています。一方で、飲食業やサービス業、事務系の仕事には向かない場合もありますが、人事評価制度のスパンと連携させることで有期雇用契約にすることも可能です。
例えば、人事評価が4月から3月までの働きで決まるとなった時、「次の4月から3月までの1年間はこういったことを頑張りましょう」と一つの「頑張るスパン」ができます。それに合わせて、期間を定めることで、正社員にも有期契約を取り入れることが可能になるでしょう。
まとめ
今回は、人事戦略の新たな考え方である、有期契約正社員制度の導入について解説しました。
有期契約を導入することで、従業員の退職タイミングもある程度コントロールし、モチベーションの控除にもつなげることが可能になります。会社として制度を取り入れる場合は、優秀な社員や幹部から導入すると効果が期待できるでしょう。
しかし、「それでも、期間の定めをしたって、結局辞める人はどんなタイミングだって辞めるんじゃないの?」と思われた方、
そのとおりです!!!
仮に、期間の途中で一方的に辞められたとしても、よほどのことがない限り社員に損害賠償を求めることは会社としても難しい。
そのことを踏まえたら、結局は辞めたくなったら、いつでも辞めたもんがちじゃないか。
その通りなんです(泣)
では、どうしたらよいのか。その対策は次回の記事で紹介します。